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過去の本日メモ 


#2003年8月30日(土)
邯鄲の夢

本日メモでもいろいろと書いてしまったのだが、「HERO-英雄」が大変気に入ってしまたので、こちらも、ネタバレ感想を別ファイルに。

秦の始皇帝の暗殺話、(というか、暗殺は実際には成功しなかったので、暗殺未遂話)というのは、中国では非常によく知られている説話なんだろうなあ…。ちょっと調べただけで、有名な「始皇帝暗殺」を含めて3、4作同じ題材の映画がでてくる。絶対権力を握る皇帝の暗殺なんて、中国の歴史の暗黒には当然たくさんあっただろうに…。
暗殺を避けて家臣すら近寄らせず、常に甲冑武装で過ごした皇帝の暗殺。しかも短刀による暗殺というのが、何故そんなにもクリエイターに魅力として映るのか…。やはり始皇帝という、荒野をひたすら8頭だての馬車かなんかを駆ってただ一人疾走し続けたが如き、若き独裁者が魅力的だからに違いない。

始皇帝は苛政をしいた暴君として知られるが、暗君ではない。春秋戦国時代を終わらせ、度量衡の統一や、万里の長城の建設を行った、現代の目から見れば非常に合理的な政策をたてた類い希な専制君主である。焚書坑儒を行ったがために、後に儒者から嫌われて、史記での記述では「暴君」ということになっているとも言えるかもしれない。

もっとも、話は紀元前200である。我らがヤマトの民は(倭…、だろうなやっぱり)弥生式土器を作っているところだ。阿房宮の建設どころか、高床式住居が精一杯。
その当時に、これだけの記録が残されていることに、中国史のすさまじさがある。


#2003年8月23日(土)
ジレンマは終わらない

イーガンの「しあわせの理由」の感想をじっくり書こうとしているうちに、随分時間があいてしまった。「しあわせの理由」については、もうちょっと考えることにして、(ちょっと考えすぎて知恵熱でそうなので)555の映画に行ってきたのでこちらの感想を先に。
実際のところ、尽きぬ文句というのは書きやすいので。

いつもの如く、盛大にネタバレしているので、別ファイルに。この映画はネタバレしちゃうと救いようがないので、未見の方で見る予定のある方は絶対に見ないほうがいいと思う。また、テレビシリーズをまがりなりにも追いかけている人は、映画は伏線を含んでいる可能性もあるんで抑えておいたほうがいいかも。いや、また、裏切られるかもしれないけどね。

それにしても、平成仮面ライダーも4作目。劇場版制作も3本目。
予算面の絶対的不足はともかくとしてCG技術の向上は表現の自由度をあげていることだけは確か。
このままでいけば、いずれはアメリカのように「スタートレック」のみたいに深いSFのドラマの制作も夢じゃないんじゃないかと……。あ、でも無理かなあ。日本とSF状況に温度差あるし。

現在、私の友人が龍騎のテレビシリーズをビデオで追いかけている。彼の鋭い感想や分析を聞くのは大変楽しみではあるのだが、同時に出来の悪い子供の通知票を受け取るような気分になる。「欠点は知っているんだ。わかっているんだ。でも、いいところだってあるんだよ。」と、ついついかばってしまいたくなる。出来の悪い子ほど可愛いということで。
大変に厄介なファン心理ではある(笑)。ひいきの引き倒しにならないように自重せねば。


#2003年7月18日(月)
グリーン・ケミストリー

グリーン・ケミストリーというのは、環境に配慮した、もしくは、環境改善のための化学ということだ。昨今の環境問題への注目で、常に悪役となってきた「化学」の一つのソリューションである。そこに「緑の」とつけちゃうネーミングのあざとさについては、個人的にはイヤンと思ってしまうけれど。とはいえ、言葉は一人歩きする。一般への耳触りは悪くない。(本当は明確な定義争いがあるらしい。きっと「こんなのは『GC』ではない」、と言い争いをしているに違いない(笑))

現在、猫も杓子もほんのわずかでも関連性があれば、いや、ちょっと無理矢理にでも「グリーン・ケミストリー」はお題目として取り入れられる。研究者は自分のやりたい研究をするためには、研究費をひっぱってこなくちゃならないから。

ということで、我が配偶者殿の仕事も、そういったグリーン・ケミストリー関連なのが結構あったりする。

ビタミンB12という化合物がある。人間の肝臓にも含まれ、多彩な働きをする補酵素だ(タンパク質の酵素の中のその働きの中心みたいなものだ。)、コリン環と呼ばれる非対称の構造の環と、中心金属としてコバルトを持つ金属錯体である。
コバラミンと呼ばれ、貧血の薬として使用される。鮮紅色を示すので、目薬に入っている時に赤いビタミン、ビタミンB12とキャッチコピーされていた。

ビタミンB12の構造

ビタミンB12の色

もっとも、この錯体の色は誠に玄妙で、中心金属の価数(電子の数)や、上下の配位子の性質によって、くるくると変わるんである。
赤や紫、黄色に緑。
緑の状態が一番活性が強いので、信号機化学反応と呼ばれたりもする。青信号でGoだ。
金属を含む錯体は、非常に強い吸収をもつために、僅かな量でも大変に鮮やかな色を示す。(ちなみに私の学生の頃の白衣はこの赤やピンクで染められていて、見られたモンじゃなかった。実験が下手なんで飛沫が飛ぶのだ。)

で、このビタミンB12は生体内で、非常にユニークな反応を司るわけだ。
酵素というのは、自らは変化することなく、反応を助けるという生体内での触媒である。例を言えば、唾の中に含まれるアミラーゼなんかだね。アミラーゼ自体は変化することはないが、炭水化物を糖に分解する反応を促進する。お陰様で、ものをよく噛んでいれば、唾の中のアミラーゼによって、ご飯が甘くなっていく。

ビタミンB12もアミラーゼと同様、酵素としてメチオニンの生合成やら、炭素骨格組み替え反応やらという実験室で再現しにくい反応において活躍する。え、これがナニの役にたつのかってのは、なかなか難しいので割愛。とりあえず、生命体の身体のシステムというのは非常に精巧で、試験管の中で再現することが難しい反応を軽々と行っているである。

何万年もの進化の果てにそこに辿り着いたとはいえ、「天然」ってのは侮りがたいモンである。

でもって、このビタミンB12はどうも脱塩素化反応にも、関係しているらしい。

半導体などの工業製品の製造において、脱脂洗浄剤なんかとして使われる有機塩素化合物、テトラクロロエチレンやトリクロロエチレンなんかは、ないと困る有機化合物であるものの、これによって土壌や地下水が汚染されてしまうことになる。

これを燃焼などさせたらダイオキシンの生成に結びついちゃうし。わりと安定な物質なのでいつまでも無くならず、結構始末が悪い。

工業製品を作らないわけにはいかないので、(まあ、工業製品のない人生を選ぶのもアリなのだろうが、私は半導体がない生活にはとても戻れない。)洗浄の過程ででる塩素化合物を脱塩素化しちゃえば、いいということになる。
そうすれば、燃焼しても無害な物質になるし。

ただ、脱塩素化するのに、元の物質よりももっと危険な物質、環境に害がある物質を使ったりすれば、本末転倒なので、「効率よく」「低コストで」「クリーン」な反応系で、塩素を取り除く必要があるのだ。

それには、「生体」の中で行われているビタミンB12による反応というのはぴったりである。(勿論、生体内の物質だからすべてが無毒というわけでは全くない。最強の毒はふぐのテトロドトキシンだし、毒キノコの存在を考えれば、天然=無害という見方はまったく妥当じゃない。)

勿論、現状、ビタミンB12をそのまま持ってくれば、反応が起こるという単純な問題ではないので、その反応機構や、試験管内でこの生体内反応の再現や、ひいては工業化などをなんとかしている途中。問題は山積みなんだが…。

原始の状態に帰るだけでは、すでにこの人類はどうしようもないところに来ている。単純に自然のなすがままに帰ったら、おそらく人類の大方が死亡していく可能性があるだろう。でもって、なんとかするためには、ここまで人間が文明を築いてきた力である「知恵」を絞るしかない。


#2003年7月14日(月)
ラグナロク

マトリックス・リローデッド。見てきたのは随分前なのだが、感想を上げるのが遅くなってしまった。

前作をさらにパワーアップした画面は確かに素晴らしい。今まで見てきた、マンガやアニメやゲームの美味しいシーンをそのままスタイリッシュな実写にしてみました、という感じだ。カーチェイスのシーケンスがちょいと長すぎるのを別にすれば、アクションとして非常によいできではないかと思う。(長すぎるラブシーンには思わず劇場で早送りのボタンを捜してしまったが…。(苦笑))

とはいえ、ちょいと物足りないのは、マトリックス上での話なのに結構大人しく現実の枷にとどまりつづけているところか。もっととんでもない映像表現でもいいかも。すでに、少々重力を無視したり、足で車を破壊する程度では、いくらでも転がっているので。

(それと、このノリの映画では難しいのかもしれないけれど、もう少しネオの、望んだわけでもないのに救世主として祭り上げられる苦悩が描けていたらよかったな、と。それを匂わせるシーンがたくさんあるのに未処理なので、ザイオンに対する責任を背負っているにも関わらずトリニティしか頭にないネオがどうにも無様で愚かに見えてしまう。)

さて、このこれみよがしという感じの画像は、語ろうとされている物語からはかなり乖離しているといっていい。一種のアメだ。バックストーリーは「台詞」でしか語られない。

目を見張る特殊効果で隠されているのは、観客すらも巻き込んで世界が混沌に還元される話ではないかと私はにらんでいるのだが…。

ということで、現在公開中でもあるため、以下大幅ネタバレ感想は別ページに。

#2003年7月6日(日)
東方幻想

幻想文学67号(最終刊)が発売。
倉阪先生の「賢者の眼」の扉用の挿画を描かせていただいたので、例によってこちらにアップ

「東方幻想」という統一テーマであるにしては、この絵は少し西洋風すぎるかな、とも思うけれど、西洋から見た「東方」というイメージのつもりである。オペラ座やルーブルを見たばかりで、その圧倒的な迫力に影響されていたのは間違いない。

私は気づいたら結構モノクロの画像が多いのだが、一般的に3Dはカラー画が多い。まあ、3Dにとってテクスチャは非常に大事だし、そのためにはやはりカラーじゃないと、ポテンシャルを十分には発揮できないからだろう。
ということで、今回はとにかく陰影ということに拘って、普段ならばバンプマッピングで済ます部分についても、モデリングした。っていっても、その効果があらわれているのかはなはだ不安だが…。モノクロにするというのは敢えて3Dの持つ情報量を減らすことなので、モデリングを密にするのは内的にも必要な作業だったと思う。

  • 「東方幻想」は現実の方位とは関わりがない。しかし、もちろん東には固有の意味がある。朝を迎える方角であり、生命・希望・若さを象徴する。

編集後記にある。そして、もう一つ、「再生」を象徴する。沈んだ太陽はもう一度昇るのが理。
ひとつの雑誌の終わりに確かに相応しい統一テーマだ。

なお、幻想文学は少々手に入れにくいが、こちらに入手方法があるのでご参考に。

追記 bk1で入手可能