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#2003年6月25日(水)
セクァーナの流れに

パリレポート完成。興味がある方がもしいらしたらこちら(世界征服若手の会)へ。
新しく買ったデジカメが嬉しくて、撮りまくった写真が500枚ほど。といっても、ほとんどがフラッシュ禁止、三脚禁止の美術館内なので、ピンが甘い。下手な鉄砲を数撃っても、やっぱりなかなか当たらないと思いつつ。何枚撮っても、現像代がいらないというデジカメの大きな利点だ。

さて、パリ滞在中、辻邦生「背教者ユリアヌス」(中公文庫) ISBN: 4122001641を読んでいた。今更ながらだが、あまりにも有名な歴史小説。ユリアヌスはガリア(フランス)総督だったし、彼が皇帝になったのも、このセクァーナ川(セーヌ川)の流れのほとりルテチア(パリ)の地にあった要塞なので、パリのカフェでカフェ=クレーム片手に読むには、なかなか相応しい。

当時、ローマの一部としてのフランスは「蛮族」の地として蔑まれ、一方、常にゲルマンからの侵攻にさらされてもいた。18世紀にヨーロッパ文明の中心地として栄え、現在まで世界に冠たる花の都の姿とはまた別の都市が二重写しとなり、なかなかに興味深い。

小説として波瀾万丈に面白いのは中盤まで。コンスタンティウス帝に父親を殺され、あどけなく大人しげな幼少時代。陰謀術数に翻弄され、コンスタンティウス帝の猜疑により、生命すら風前の灯火の青年時代。美しい王妃エウゼビアとの禁じられた恋。
息つく間もない運命に翻弄された挙げ句ガリアでの叛乱へと追い込まれ、正面衝突を前にしてのコンスタンティウス2世の死によって転がり込んできた帝位。
なるほど、ギリシヤ・ローマの神々の恩寵をうけた英雄としての生であろう。

キリスト教を嫌ったユリアヌスの目に映っていただろう、迷信深く、猜疑心に溢れ、頑ななキリスト教者。キリスト教者ではない日本人の小説家だからこそ、その姿の描写は辛辣だ。いささか、キリスト教徒たちにも弁明があったろうと思えるほどに、この小説では悪役である。

だが、この小説の深みは陰鬱な後半にある。ローマ帝国の頂上にたち、大いなる権力を持つ正帝たる彼の苦悩の後半生だ。そこにはすでに神々の恩寵は現れない。

ユリアヌスの愛する生の全面的肯定と寛容に満ちた美しいギリシヤ・ローマ文化。しかし、それは死につつあった。台頭する絶対神のもとの平等と来世の栄光のほうが、ひとびとの心を届くのだ。ひとびとの心を捉えるのだ。その歴史の大きなうねりを前にして、どのように過去の文化の素晴らしさを説いても、また絶対の専制君主の巨大な力でもっても、立ち向かいえるものではないのかもしれない。
歴史において「世を変えた」人々とは、結局のところ、この時のうねりと波に乗ることに長けていたにすぎない。

ルーブル美術館を歴史の流れに沿って歩くと、中世ヨーロッパの文化の衰退がはっきりと見て取れる。ギリシャ・ローマで培われた冷静極まりない写実は失われ、古拙な神への賛美だけが許されることになる。飽きるほど同じモチーフ。稚拙な描写。
黄金比と生き生きした描写はルネサンスを迎えるまで過去に押しやられてしまう。

ユリアヌスも志半ばで、ペルシャとの戦争のなかで悲劇とともに生命を落とす。
そしてローマは、コンスタンティノポリスを中心としたキリスト教支配体制となるのである。


#2003年5月27日(火)
Lord of the Angels

エヴァンゲリオンがハリウッド実写化されるらしいとのニュースがネットの中を席巻したとのこと。いいニュースというには、どうしても複雑。アニメや漫画やゲームの実写化については、いろいろとイヤな経験が胸に浮かぶし、ぬか喜びとそんなもんに金を払った自己嫌悪を重ねてきたし。
それでも、Lord of the rings のスタッフが参加するらしいので、CGあたりはなんとか期待できるかもしれない。

そこで妄想が発動して、Lord of the ringsとエヴァをフュージョンしてNeon Genesis Lord of the Angels:Evangerionというのではどうだろうか?と友人に話す。「使徒の王」ということで、なかなかに意味深な題では?題名だけですでに、究極の秘密のネタバレしているような気もするが…。

とゆーと、アダムを背負って、モルドールの山に捨てに行く話?と返される。ぶよぶよしたアダムを背中に背負って姥捨てに行くイライジャ=ウッドが目に浮かぶ。なかなか、good。なにしろ前世では後生大事にセントラルドグマなどに繋いでおくから人類が滅びちゃったわけだし。選択としては間違っていないと思う。

となると、やはり綾波はサムだよね、と。どうせ誰がやっても文句がでるに決まっているキャラなんだから、いっそのこと男の子にしちゃえばいいいんだ。
寡黙に目の前の鍋をかき回す綾波が逆に想像できて、それはそれで素晴らしいが、多分ウサギを持ってきても料理してくれないんではないかと。私、肉、嫌い、などと言って。

メリーとピピンは、トウジとケンスケでポジション的にもちょうどいい。
一応の色男という設定で、アラゴルンが加持さんなのは、異論のないところだろうが、アルウェンのミサトさんはどうだろう?

で、アスカをどうするか、ということで、これはもうゴラムにやってもらいましょう、と友人とも一致。「旦那、バカァ」と叫ぶわけだ。CGで。
まあ、傷を持った似たもの同士という設定からいっても正しいのではないかと。

そうすると、外見こそ冬月に似ているガンダルフがゲンドウをやるわけだね。会議の席上で、旅立つなら早くしろ、でなければ帰れと冷たく言い放つゲンドウを。もっともホビットたちはホビット庄にさっさと帰りそうな気もするが。
とはいえ、マグニートーの如く、あくまでも悪役の道をつらぬいてくれそうで、とっても楽しみ。

と、妄想は止めようもなく膨らみ…。
話のタネになってくれた分、もう映画の代金は前払いでとりもどしたような感じ。コワイモノみたさで見に行く可能性もあるんで…。

#2003年5月8日(木)
メトロの少女

花の都パリに行って来ました。パリ滞在のレポートは別に書くとしても、膨大なデジカメ写真の整理がいつになるやらわからないので、ちょっとしたエピソードを。

5月のパリは素敵な街だ。古い並木が清々しい緑を宿し、古い彫刻で彩られた建築を包む。歴史的遺産として与えられた豪壮な建築物。世界中から集められた美術品を見ることのできる美術館(ミュゼー)。
だから当然街には観光客が溢れている。世界中の言語が話され、多様な人種が闊歩する。

パリのメトロ(地下鉄)はその地下に張り巡らされている。まあ、そこは東京や大阪などの日本の大都市圏と変わらない。地下鉄は交通渋滞にも関係がないので、便利だ。(パリ市内はかなりの交通渋滞)
また、東京大阪ほどは複雑ではなく、路線ごとに番号などもついており、旅行者にもかなりわかりやすく利用しやすい。

しかし、このメトロ。昼間でもかなり物騒だ。

一人で私がメトロを利用しているときのこと。地下鉄の後ろの車列から、意味不明の叫び声がする。
女の子と男の子が喧嘩をしているのか、なにか言い争っている様子。
なんだろうなあ、と思いつつ。地下鉄の運転手がなにやら放送している。言葉に不自由な私は状況がよくわからない。

またその次の日、やはり地下鉄の中。かなり満員状態。女性の悲鳴が。少女たちに囲まれた際にバックの中味をすられたらしい。身なりのよさそうな二人連れである。男性のほうが、スリの女の子を追いかけようとしたが、周りが「ダメだ、あきらめろ」と制止している様子だった。

そして旅行も終わろうとしている最終日。オペラ座に向かう途中で我々もついに少女たちに取り囲まれる。腕に「TIME」と書いた稚拙な腕時計の絵を描いた見せてくる。つまり時間を教えろということらしい。しかし集団で手を伸ばす剣呑な雰囲気に、どうして時間など教えてやるか。そして、こちらのバックやポケットに手を伸ばしてくるんである。
人にものを聞くときは、それなりの態度ってモンがあるぞ。←それ以前に問題が…。
Noと何度もいい、睨み付けると、頭目とおぼしき少女は「なにさ、時間を聞いているだけじゃん、このケチ」という感じの悪態(フランス語だが、そういうのってよくわかるものである。)をつく。そして、次の駅に到着したところで潮が引くように逃げていった。(こういう時は、日本語で怒鳴るのが一番よかったかもしれない。)

スリというよりも恐喝に近い、これは。幸い私たちは何もとられた形跡はなかったが、こういう場合気をつけて気をつけられる問題じゃなさそうだ。やはり、とられて困るものはメトロには持ち込まないほうがよさそう。パリへの旅行を考えている方々はご用心。

しかし、悪態をついていた少女は、金色の髪をおさげにしてなかなか可愛い。フランスでは普通かもしれないが、日本でならアイドルになれそうなくらい。性格の悪さとずる賢さもあいまって、こまっしゃくれた感じの美少女である。うーん、ハーマイオニーたん萌えーなどと言っている男の人だとつけ込まれてしまうかも。(ハーマイオニーは金髪ではないけれど。)恐らく小学生くらい。大人が油断する年頃の子を丹念に選んである。

スリ集団を率いる美少女、なんてフィクション的には美しいが。実際にはあまり旅先で気分が悪い思いはしたくない。

でもって、逃げていく集団を見守りっていたのが、この前喧嘩をしていた男の子が…。どうも彼がこのスリ集団をコントロールしているようだ。
このメトロのスリ集団は結構有名らしく、いろんな被害報告があがっているらしい。野放し状態に思える。確かに深追いは禁物なのかもしれない。後ろにどんな組織があることやら。偽警官やら、置き引き、スリなどなどなど。フランス、イタリア、スペインなどではかなり多いらしい。美しい史的財産に目を奪われがちな観光都市がある国ばかり…。

私のような、おとなしい観光者は彼らにとってはカモだろう。盗られるほうがマヌケなのだというラテン系気質。なかなか困ったモンである。