7日目 オペラ座 Palais Garnier

この日でパリを後にするのだが、実は飛行機の出発は夜。というわけで、ほぼ丸一日をこのパリで過ごすことができる。

ホテルのチェックアウトはお昼の11時名ので、ゆっくりパッキングもできる。パッキングの手を途中で止めて、最後に会議場のスーパーへ。

日本への持ち帰り用のワインとチーズを選ぶ。前回の旅行ではブルゴーニュが中心であったので、今回はボルドーを中心に。ラベルを見ても当然わからないので、これと決めた産地のグランドクルーを中心に買い込む。いや、あんまり古いのは手が届かないけれど。(どうも値段は古さに依っているみたいだ。)どれを飲んでも美味しく感じるから、どれでもいいような気もするけれど。

メトロの出口から見るオペラ座


入り口にはいると楽聖の彫像が飾られている。

ホテルに荷物を預けて、最後の観光に。
まずは行きつけのブラッセリーに美味しいカフェ=クレームが最後に飲めるからといって配偶者をひっぱっていく。

相変わらずにこりともしないおばさんだが、カフェクレームと力を入れて復唱し、持ってきてくれる。もし、もう一度パリに来ることができたなら、ここにコーヒーを飲みに来るからね。凱旋門の近くの場所はちゃんと覚えたから…。
(何度も通ってきていた、あの東洋人はなんだったんだろう、と思っているに違いない。)


さて、ここで突然思い出してオペラ座に行こうということになる。相変わらずの計画性のなさ、ではあるが。

オペラ座。パレ=ガルニエ。オペラ=ガルニエとも呼ばれる。映画やミュージカルの「オペラ座の怪人」の舞台ともなった、歴史ある劇場である。

1875年に、当時36歳の設計士シャルル=ガルニエの設計によって、建設されたパリのシンボルのひとつ。

劇場への階段


赤と金の観客席

外観は2000年になって、改装されたらしく、キレイに化粧直しがされている。特に頂上に飾られてい彫刻など、金色が新しすぎて、いささかチャチに見える。まあ、あと20年くらい経ると落ち着くのかもしれないけれど。

しかし、圧巻はその内部である。装飾過多な「ナポレオン三世」スタイル。高い天井のその端まで、悪趣味なほどに彫刻とシャンデリアの光と影で演出された内装は、「美しい」という言葉すら飲み込ませるほどの迫力がある。

まさに「劇場」の中の「劇場」。「劇」に酔わせるための舞台装置として、これほどのものはないだろう。いや、下手をすれば、「劇」のほうが負ける。この空間自体を凌駕するなにものかがなければ…。

そのためか、現在この劇場はバレエが中心で、オペラが開催されるのは稀だとのこと。


「オペラ座の怪人」の物語を産んだ巨大なシャンデリア。実に7トンの重さがあるそうだ。天井を飾るシャガールの絵。皇帝の色である緋色の緞帳と金色で飾られた客席。客席の豪華さ、華麗さ、ためいきものである。

さらに、私が惹かれるのは、訪れる人もまばらな、奧の部屋である。暗い階段の裏に飾られた、人を招く怖ろしい顔をした彫刻たち。なるほど、Phantom(異形)の一匹や二匹、住み着いていてもなんの不思議もない。

巨大シャンデリアとシャガールの絵

これが階段下の空間なのだから恐れ入る

悪趣味も極めれば美。美を極めれば、それは非現実につながる。
ここまで徹底すれば、もう幽界の光景である。数知れぬ蝋燭の光が輝けば輝くほど、まばゆければまばゆいほど、その奧に宿す闇は濃く、深くなる。

このディティールを再現するのに、どれだけのポリゴンがいるのか、そしてどれだけのCPUパワーがいるのかと、はしなくも思ってしまうのはCG製作者の業(ごう)。

まったく、一種サイコな情熱を感じさせる。見ているだけで、クタクタに疲れてしまった。



その11へ続く