三日目(後半 混沌という名のマルディ・グラ美術館)

ジャクソン広場のお向かいには、博物館二つとセントルイス大聖堂が並んでいる。ここの通りは、フレンチクォーター観光の中心。大道でブードゥーのフォーチュンテラー(占い師)たちが店を出している。

入口の派手派手しい道化師に招かれて、まずはマルディ・グラ博物館へ入ってみることにする。たれ写真を一枚撮ってから、チケットボックスへ。

チケットボックスのおばちゃんはとても親切で、この辺の美術館を回りたいのならばといって、全部に回れるオプションを教えてくれる。ついでに、「学生さんなら、学生割引があるわよ」と。何回も「学生じゃない。大人だ」と言うのだが、「ほんっとーに学生さんじゃないの?どこの学校でもいいわよ?」と重ねてきいてくるので、苦笑する。現在、合衆国内の学校には行ってません。いや、もちろん、日本でも行っていないのだが…。



左からカビルド、セントルイス大聖堂、マルディ・グラ博物館




こういう写真が撮れるのも
マルディ・グラ美術館だけ。
しかし、視線が怪しげな道化師だ。

マルディ・グラ博物館はもとは昔の裁判所だったのを州立の美術館に仕立てたもの。近頃マルディ・グラ専門の博物館になったらしい。(ガイドブックにも載っていなかった。)
時間も早いせいもあって、中には人も少ないし、フラッシュ焚いて写真をとってもいいわよ、と言われたので、たれ写真撮り放題である。ぱらだいすー。

マルディ・グラとは、フランス語で「肉食の火曜日」の意味らしい。謝肉祭の最終日だそうで、断食修行の後のどんちゃん騒ぎのクライマックスといったところ。現在は断食修行なんざやらないけれど、マルディ・グラだけはきっちりと伝統を守られている。いまもルイジアナ州の街々で執り行われているのだそう。
そのなかでも、このニューオリンズのマルディ・グラは、リオのカーニヴァルとも並ぶ世界三大カーニヴァルの一つ。一年の暮らしは、この祭のためにだけ存在するといっても過言ではないのだそうだ。
詳細はこのサイトにて。


世界中の観光客がニューオリンズのマルディ・グラにやってくるので、日本から見に行くのはかなり大変。ホテルの予約は半年前から必要だし、ホテル代は倍以上に跳ね上がるのだそうだ。

博物館の中はたった一つのお祭りのためとは思えないほどの充実ぶり。華やかな仮面に羽根のお姉さん達や異形の仮面やら、華やかな山車。ヨーロッパ由来のきらびらやかさと、ラテンの情熱、アフリカ系の躍動感。美学と悪趣味。まるで、ニューオリンズ名物のガンボのようにいろんなものがごった煮状態。

山車の上から、きらきらとした金と紫と緑のマルディ・グラカラーのネックレス(ビーズ)やコインを道端の人が掲げる紙コップの中へと投げ入れられる。(日本でいえば、棟上げの時の餅捲きみたいなもんだろうか。)



まるで孔雀のような美しい衣装。
みな思い思いの仮装をする。




勿論、ブードゥーの影響で
骸骨つきのおどろおどろしい仮装も。
メメント・モリの世界。



スペイン風の錬金術師風の格好




アンティークはさすがに上品なつくり。

私が気に入ったのは、初期のマルディグラで使用されたらしい華やかなアンティークの衣装。誰でも王様や女王様になれるのが新大陸のマルディ・グラである。

これの現代版もあって、今も華やかな舞踏会が開かれている。その模様のフィルムもあったんだけど。あまりにもキラキラしくて…。どちらかというと、紅白歌合戦の演歌歌手と紙一重と思ってしまった。




古いクイーンの写真もよいのだ…。




コレは昨年賞をとったという
タツノオトシゴの仮装。
ちゅうたれも( ゜д゜)ポカーン

マルディ・グラ博物館から出た後は、セントルイス大聖堂をこっそりと覗き、クリスチャンではないから遠慮して、反対側のカビルドと呼ばれるニューオリンズ歴史博物館へ。マルディ・グラ博物館の中も冷房が効いていたが、こちらは冬眠したくなるような寒さ。ここの見所はナポレオンのデスマスクらしいが、まあ、あんまり関係ないよなあ、と思いつつ。(ナポレオンはニューオリンズが合衆国となる前の為政者だから、ということらしい。)

中を覗いていくと、ここルイジアナのプランテーションでの黒人奴隷への扱いがいかにひどかったかという歴史を指し示すような展示物ばかり。いささか憂鬱になりながら見ていくと、さらに奴隷制度が終わってからもいかに人種差別問題が続いたか、という悲惨な歴史ばかり。ニューオリンズがどのように発展したかというお国自慢な展示物もあるのはあるけれど…目に入らない。

ということで、カビルドの写真は一枚も残っていない。





なかなか素敵なレストラン。
中二階のバルコニーでバンドが演奏する。


夕方からパーティへ。今日はO先生のお誕生日祝い、アメリカにしては超豪華なディナーパーティである。バーボンストリートの、Arnaud'sというクレオール料理レストラン。クラシックなヨーロッパスタイルの室内。最初はもちろんカクテルタイムから。久しぶりに掃いたヒールの高い靴を持てあましつつ、笑顔でご挨拶。

お料理のほうは大変美味しいが、なにしろ量が多い。トマトカップのサラダと牡蛎のチーズ焼きとクラブケーキという前菜を食べたらすでにお腹一杯に。それからアントレがフルコース(魚も肉も)出てくるなんて思いもしないもの。
トマトカップのサラダは外側のトマトは残すべきだったかもしれないけれど、となりに座っているイギリス人教授の奥様も食べていたので、まあ、問題ないかも。何しろ、海外旅行では貴重な生野菜。

パーティには、生バンドがはいってディキシーランドジャズを演奏してくれる。バーボンストリートのライブハウスでは、ほとんどロックばかりだが、こういう席ではちゃんとジャズの演奏もあるわけだ。
O先生のお誕生日を祝って乾杯(ブロージット)


その6へ続く