岩があるから、登るんだ


ふ、極めたぜ、日本の岩

私の配偶者のテキサス時代の受け入れ先Jonathan Sessler教授(以下ジョンと省略)が日本に子供さんを連れて観光にくるということで、運転手とガイド(?)として、いっしょに遊びに行くことに。
初日、講演で忙しいションのために、子守として二人のお子様を預かるはずだったのだが、なんと私は風邪でダウン。通常の風邪ならがんばって行くところだが、とにかく激しい胃痛腹痛。病院で痛み止めをもらったけれど、鈍い痛みが続く状態がまだまだ続く。明日があるから今日は勘弁、と情けない声でリタイア宣言

せっかく敷島はオタクの国の大和にいらっしゃった外国(とつくに)の上品そうな坊やたち、アニメやらゲームやらといった両親の嫌がるアレゲな「日本文化」に染めてしんぜようと思っていたのだが、大幅に失敗。いやぁ、残念だったなあ…。まあ、そういう悪いことを企んでいるから、バチがあたったのかもしれないけれど。

さて、火曜日。天気も上々!胃腸の痛みも残るものの、なんとか元気になり、痛み止めを持っていれば、なんとか耐えられそうということで、レンタカーで出発。残念ながら、たれぱんだは部屋でお留守番。(といっても「おおたれ」と「ちゅうたれ」と「あさたれ」はこっそりと密航したんだけど…ほとんど取り出すヒマもなく。)

まずはホテルに、ジョンたちを迎えに行く。最初にソフトドリンクを買ってから車に乗ろうということになり、近くのコンビニで買い物。なんとすでにコンビニ文化にはすっかり慣れている様子で、さっさとペットボトルの「カルピス」なんぞを買いこむ。青春の味カルピスを昨晩体験して、お気に入りになったということ。うむ、大人への第一歩である。

ジョンの息子のJordan(以下ジョーダン)13歳と、その友だちAdam(以下アダム。姿(なり)こそ一人前だがまだまだお子様の二人。特にジョーダンのほうは、中学生時代に教室にひとりはいた落ち着きのない性格の持ち主。いつもわけのわからない歌を歌いつつ踊っている。足が長すぎるのか、持てあまし気味で、ぐにゃぐにゃと動く。黙っていたら美少年なのにねえ。アダムのほうは、ちょっとおとなしくて控えめ。丸顔が愛らしい。いつも破天荒なジョーダンをサポートしている感じだ。彼は中国語を習っているので漢字が少し読めるとか。

さて、そんな感じで出発した我々、天ヶ瀬までは高速道路を使って約2時間の距離である。福岡市を離れ、天ヶ瀬が近づくにつれて、景色はのどかな山の風景に。川は上流に向かい、鄙びた景色が拡がっていく。アメリカに比較すれば、かなり自然が変化に富んでいるので、面白いはずなんだが…さて、おぼっちゃんたちが何を思っているのか。ジョーダンとアダムの会話はとにかく速すぎて、私の英語能力では解読不能。多分スラング混じりなんでしょう。まあ、日本語であっても中学生同士の会話なんて追い切れないから、そんなもんかもしれない。

天ヶ瀬駅で、車を停めて、まずは川沿いの温泉街を探索。ただでさえ、人もまばらな天ヶ瀬の街だが、平日でさらに人がいない。まあ、静かといえば静かだけど…。巨大な石がごろごろとしている山間の急流は彼らのお気に召した様子で、とっとこ二人で進んでいく。足が長いだけあって速い速い。元気元気吊り橋を目標に、「山の音」という食事処を目指す。ところが、事前調査が悪く、ここはお休み。(後からネットで調べたら火曜定休って書いてありました。たはは。)まあ、お天気もいいし、写真を撮影しながらそぞろ歩きも悪くはない、ということで道なりに進む。途中で巨大な石にジョーダンは登ったりしてごきげん。やっぱ中学生というのは洋の東西を問いません。

そぞろ歩くと顕徳望尊階段1217段の階段の看板が。ついついそれを説明しちゃったら、山歩きの大好きなジョンはすぐさまにエクササイズターイム!えーと、私、昨日まで熱出して寝込んでいて、昨日から今日まで蒸しパン一個しか食べてないんですけどー(汗)
だが、いやもおうもなく歩きにくい石段を進む。青い目の異人さんに行き交う小学生が珍しそうに挨拶していくので、日本に慣れきっているジョンはにこにこと答える。「コンニチハー」「アメリカジンデスー」となんかめちゃめちゃサービス精神旺盛。



イタズラ坊主ふたり。


頂上まで登りました、という証拠。



台風の傷痕がいっぱい。

しかし、たかが100段も行かないところで、私は目の前が白くなってきて脂汗が浮かぶ…。「もうダメ。どーか元気な人たちでいってください。」とリタイヤ。ジョンと配偶者の背広を預かり、ジョンが見つけてくれた小さなベンチでぼーっとして待つ羽目に。バックの中を探ったら、コンビニで買ったスポーツドリンクが入っていたのが、なによりの助け。ああ、情けねー。(いっしょに上に登った配偶者は、車の中に飲み物を置いていて、えらい目にあったとか。)

さて、私はそうやってひとりで預かった背広を日よけにしつつ待っていたわけだが…。登頂組は、途中リタイヤもせずに階段を登り切ったらしい。途中台風のせいで倒木があったりして、それに登ったり、山頂から小さな倒木を投げて遊んだり…はてさて、やんちゃ坊主どもであることよ。

待っている私も、一応回復して、いつまでも帰ってこない登頂組に連絡を取ろうとするのだが、携帯電話をかけたら背広の中からのんきな着信メロディが流れてきて「こりゃーダメだ」状態。

やっと降りてきた少年と元少年たちとふたたび合流した頃には、お昼もかなり過ぎて、昼ご飯を食べられる店をみつけるのも困難な時間に…。
なかなかファーストフードもみつかりにくい天ヶ瀬の街、ここらで知っているのは喫茶店くらいだしなあ、と歩いていると、うどん屋さんの看板が。その前からアダムに「Udon noodle」が食べたいといわれていたから、まあ、ここでいいでしょうと入ることに。小さなお店で、おばちゃんひとりで切り盛りをしているようなところ。数種類あるうどんを適当に訳して知らせる。「きつねうどん」って、fried tofu noodleでいいのか?まあ、作り方はあっているし。

ベジタリアンのリクエストで、全員きつねうどんを。私だけ「揚げ物」は胃に厳しそうなので「かけうどん」を食べる。でも結局かけうどんにも小さなきつねが入っていたので同じことだったけれど。お腹はとびきり空いていたし、うどんはこしがあって美味しかったし、結果オーライ。言葉もわからないだろうに、テレビに映っている2時間ドラマを食い入るように見ている少年二人がなかなか面白い。一応筋の把握までできているらしいのだ。あー、これから2週間、きっとテレビっ子になって帰っていくのだろうなぁ。

さて、腹ごしらえもすんだところで、「桜滝」までさらにウォーキング。踏切もない線路を越え、田んぼのあぜ道を行くのは、同じ日本人でもびっくりするのだが、ジョーダンたちはさらに興奮気味。あばれまわったあげくに、土手で転んでしまう。ふとふりかえると、足からはどくどくと血が流れているし…。ひとり真っ青になる私。仕方がないので配偶者が手元にもっていたカットバンで応急処置。しかし、けがした割りに、ジョーダンはぜんぜんめげていない。相当痛いだろうに、平気。滝の風景を写真とったり、滝のしぶきのかかるところまでひとりでひょいひょいと行ってびしょぬれになったり。しまいにはジョンに叱られてひきずられていく羽目に。これ以上ここにいたら、間違いなく川に落ちることになりそうなので、とにかく宿へ。



桜滝を前にして。秋の長雨の後なので、流量がかなり多く豪快。


その2へつづく