翌日、一行はオールドタウン(註7)とバルボアパーク(註8)にでかけた。これではまるで観光旅行ではないか。世界征服はどうした?…そしてコアラで有名なサンディエゴ動物園にて。

 

軍曹

「サンディエゴの動物園はひとつひとつの檻が広くていいですよね。動物がゆったりと幸せそうに暮らしてる。日本の動物園はなんか動物がかわいそうだものなあ。狭いところに閉じこめられて生気がなくて。まあ、それは人間様も同じ事が言えるけど。」

悪の総司令

「きゃ〜。コアラかわいい★〜。パンダもいる☆〜。」

二等兵

「あの、閣下、いつになったら任務をはじめるんでりますか?ミーハーばかりしてますが。」

悪の総司令

「うるさいなあ。いいんだ。こうやって、アメリカ合衆国の本当の姿を学んで、我らが世界征服した後の理想郷をだな・・・・ああん、カンガルーもかわいい★。」

軍曹

「それしても、やたらと広いですね。(註9)この動物園。歩いてるだけでおなかすいちゃいましたよ。」

二等兵

「軍曹、それはぬかりはありません。さきほど、ハンバーガーショップをみつけておきました。噂にきく本場のハンバーガーであります。(瞳キラーン!)」

悪の総司令

なるほど、気がきくな。では、世界征服に向けて腹ごしらえだ。」

二等兵

「それにしても太った人が多いのはうなずけるな〜。このハンバーガー、でっけ〜!パテの厚さ2cmもある!フレンチフライポテトなんて、皿一杯で一人前ですからな!もぐもぐもぐ、ン〜、自分もこれなら満足でありまふ!」

悪の総司令

「って。うれしそうに全部3人前くらい食べてないか?ネバダ二等兵。」

軍曹

「ピザは座布団くらいの大きさがありますよ。このバケツにはいったコーラがラージ?うえ見ているだけで気持ち悪くなってくるなあ。」

悪の総司令

「ちょっと、表現が大げさかも(註10)・・・・」

二等兵

「でも、カラフルなパンダ模様の水筒みたいなコーラの入れ物は便利ですな。なるほど、スーベニアカップというのか・・・・・・後で、中身も入れ添えてもらえるし。合理的ですよね。」

悪の総司令

まあ、乾燥が激しいので飲み物は必需品だからな。あ、軍曹、やたらと子供に愛想をふりまくな。誘拐犯(註11)とまちがえられるぞ。」

軍曹

「いやー。後ろに天使の羽が生えてそうですよね。かわいくて。かわいくて。少しおませでつんとしてますけど。」

悪の総司令

「でもなあ。あの天使たちが、そこらへんのでっぷりとしたむさ苦しいアメリカ人のひげおやじになるんだぞ。」

軍曹

「・・・・・そ、そりゃそうですけど。天使がひげおやじですか・・・・身もフタもない。」

悪の総司令

「ほらエレベーターに乗る時はレディファーストだ。これを守らないと、特に年輩のご婦人から、足を蹴られるぞ。」

二等兵

「きれいなお姉さんもたくさんいますけど、みんなものすごくたくましくて、気がつよそうですよね。閣下も顔負けくらい。」

悪の総司令

そこで、なんで、わたくしが比較の対象となるんだ。東洋人はみなフェミニンと相場が決まっているぞ。」

軍曹

「・・・今はコメントを差し控えたい気持ちでいっぱいです。私は貝になりたい。」

悪の総司令

「天ちゅう」

軍曹

「ゴス。・・・・・あ、なんでぇ〜?私は何もいってませんよお。」

 

…軍曹のたんこぶ、3個目。

二等兵

「ああ、軍曹の後頭部が、さっき食べたアイスのように・・・。大丈夫?」

軍曹

「なんとか・・・って、ネバダさん、なぜこぶの上にチョコチップをトッピングしますか?ああ〜、よだれまで〜。」

悪の総司令

「ちょっと目が恐いぞ。ネバダ二等兵。」

 

サンディエゴ湾クルージング(註12)に出かける一行、そして暴走する奇妙愛軍曹。

 

二等兵

「湾内一周のクルージングですか?まあ、自分は海は珍しくはないけど、景色がぜんっぜんちがっていいですね〜。白いヨットはたくさん浮いているし。」

軍曹

「海はいいですねぇ。ほら、夕日に向かって叫びたくなります。私は学会に復讐してやるんだあぁぁぁぁぁぁ。」

二等兵

「軍曹、軍曹。そりゃキャラがちがいます。博士にもどってますよ。」

悪の総司令

「お、おい。アメリカ電気化学会の補助(註13)で我々はここに来ている。不穏当な表現は避けろ。軍曹。」

軍曹

「ああ!あれは巡洋艦では?」

悪の総司令

「ふ、サンディエゴは西海岸で最大の軍港なのだよ。わたくしがただ漫然とここを旅の目的地に選んだと思っているのか。ふっふっふ。太平洋方面に向かうのはここと真珠湾だ。従って、この軍港を不意打ちでたたけばアメリカ艦隊に最初に大きな打撃を与えることができる。」

二等兵

それって、50年前にやって結局失敗した作戦じゃないんですか?閣下。」

軍曹

「あうー戦術級機動戦艦だ。本物だ本物だ。うっとり。オレもうここから帰りたくないよお。」

悪の総司令

「では、そこらへんにある核を搭載した潜水艦をひとつ、かっぱらって、独立国家「や○と」を名乗ろう。」

二等兵

「なんだか某黙ってる艦隊みたいですね。著作権の問題があるのでは・・・?」

軍曹

「あああああ、あれは空母ミッドウェーだ。じゅるじゅる。」

悪の総司令

「うむう。それでは、そこの海沿いの別荘地におられる退役軍人(註14)のみなさんをスカウトして、扇動して戦うというのはどうだ?太平洋戦争やベトナム戦争の勇者だぞ。」

二等兵

「それは、ちょっとお年のほうが・・・・。しかもどうやってスカウトするんです?(ま、まさか・・・お色気!?(どきどき))」

悪の総司令

「………おい、ネバダ二等兵。そこで暴走している奇妙愛軍曹を実力行使でつかまえてこい。そろそろ、クルージングも終わるころだ。」

二等兵

「実力行使でありますか?は。命令ですので、従います!ごめんね、博士。ずるずるずる……」

軍曹

「ああ、ジェット戦闘機の連隊だ。幸せ………ずるずるずる。」

かくして、サンディエゴの探索を終えた一行は夜景のきれいなレストラン(註15)で晩餐をとることになった。港で待つ二人の人影。

 

軍曹

「ふーん、すたーおぶいんでぃあ・・・・・。大航海時代風の帆船を博物館にしたてているのかあ。」

二等兵

「閣下、おそいっすね。女の人はこれだから。おしゃれしてんですかね。」

軍曹

「いやーネバダさん。ここの港はおもしろいっすよ。夜景もめちゃくちゃきれいだし。」

二等兵

「アメリカってのは確かに豊かなところですねえ。」

軍曹

「でも、閣下の言っていた治安の悪い場所ってところには、かなりの数のストリートピープルがいましたよ。閣下の話では今の好景気でだいぶん減ったそうですが。特にサンディエゴはメキシコとの国境の街ですからね。オーバーステイの問題とか大きいみたいですよ。」

二等兵

これだけの豊かな国と、第三世界とが陸続きで接しているんですからねえ。それは問題がおこるだろうなあ。」

軍曹

「それとよくアメリカのことを人種のるつぼなんていいますけど、実際は人種のモザイクですからね。高いレストランで食べているのは大概、白人だし。働いているのはマイノリティーだし。なんか私は釈然とせんですよ。」

二等兵

「難しい問題ですね。巨大国家アメリカの光と影だな。その落差が日本以上に大きいからなあ。」

軍曹

「外国人の私たちには・・・・・違和感が大きいですね。

二等兵

「ところでタクシーの運ちゃんのアフロアメリカンのおっちゃんは、とても親切で明るくていい人でしたね。」

軍曹

「ちょっと、独特の英語が聞き取りにくかったけど。まるでブルースでも歌ってるような口調でしたね。かっこよかった。」

二等兵

「まあ、全般的に人間おおらかでやさしいし。感じのいい場所なんですけどね。」

軍曹

「そうですね。アメリカはなにもかもが大きいなあ。」

悪の総司令

「お〜〜い。待たせたな。二人とも。女性は支度に時間がかかるのは古来からの法則なのだ。」

軍曹

「閣下、そんなに走ると、また何もないところでつまづいて転びますよ。」

二等兵

「あ、転んだ。あ〜あ。」

転んでもただではおきない(?)悪の総司令は新たなる野望を胸に抱きつつ、アメリカ西海岸を後にして、一行は日本への帰国の途についた。愛と勇気と希望の名のもとに、「世界征服若手の会」の未来に栄光あれ。

なお、ゴルコムの本部はスイスのジュネーブに存在している。なんと有り難くも総統閣下チコリ様から、メッセージを頂いたのだ。

総統からのメッセージ

世界征服若手の会サン・ディエゴ出張報告ご苦労であった。が、しかし、情けない、あまりにも情けなさ過ぎるあの結果。せめて、駆逐艦の1隻でもかっぱらってくれば…。

いや、若手にあまり多くをもとめまい。

こうなったら、私が何とかする。実は今潜入している組織(なぜか、総統はスパイ でもある)にアメリカ大統領のビル (ザ・スケベ)クリントンがヒラリーと一緒に来ているのだ。こうなったら、パーなインターンを大統領の元へと送り込み、Air Force 1ハイジャックして、ゴルコム本部のため空母を手に入れようぞ。(なんか、話がハリソン・フォードにずれてるような気が…

一同敬礼!

 

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