ヴァン・ヘルシングネタバレ感想(脳内補完)

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この映画を見ていてよく分からないのは、何故不死の吸血鬼が「子供」を欲しがるのか?ということだ。

不死、すでに死人である吸血鬼は、遺伝子のキャリアとなる必要はどこにもない。だから、本来「子供」を生む必要などどこにもないのである。
また眷属を増やし力を得るということだけを考えるのならば、ドラキュラの花嫁のように血を吸うことにより吸血鬼は自然に増える。プラハには彼の眷属は沢山いる。おそらくそれは変わり果てた元人間なのだろうし。

もう一つの分からないのは、「親」であるドラキュラが死ねば「子」の吸血鬼たちは死んでしまうことである。ますます彼ら「子」吸血鬼がドラキュラの遺伝子を次世代に伝えるものではないということだ。
となれば、あの「子」吸血鬼を何と解釈すればよいのだろうか?他の眷属とは違う彼の意志そのままに動く分身なのか?

実は吸血鬼にとって怖ろしいのは同族が増えすぎて、血を吸う相手がいなくなることだ。だからこそ彼らは常に歴史の中の闇にひそみ、人間との微妙なバランスでの共存をはかってきた。
彼らが「美女」を好むのは、「美」が彼らの力で獲物をえやすくするためとともに、人間に対するカムフラージュを容易にするからだ。まあ、そこのところは、数多くの吸血鬼もののフィクションにおいて明かなのだが…。

もちろん、ドラキュラ自身もそうやって、迷信深いムラとの共存を図ってきた。またプラハで都市生活を営む彼の眷属たちは、当然そういった共生関係を続けなければ、自分たちも危うくなることを知っているのだろう。
だが、ドラキュラは自らの意のままになる分身を作って、この共生関係を完全に破壊しようとしている。大量の吸血鬼が存在すれば、爆発的にその眷属は殖え、その挙げ句彼らの食物である人間を失ってしまうだろう。

もしかしたら長く生きすぎた彼は、一種の自殺行為でもって人類諸共に吸血鬼を滅ぼそうとしているのかもしれない。劇中彼は、「悲しみ」も「苦しみ」もない虚ろな自分を白状しているではないか。

そういったドラキュラの行動を法王庁が把握していないはずがない。おそらくは吸血鬼との長い共生関係を築かせたのも、長きにわたり陰謀の伝統を持つ法王庁だからだ。

手駒として使っているヴァン・ヘルシングの失われた記憶を彼らが調査していないはずもなく、今回の件に関してもあらかじめ有効な武器として「ドラキュラを殺した男」を送り込んだといえるだろう。もちろん、彼を動かすために、常にその記憶の欠損を強迫観念にして操ることも忘れていないし。彼を孤独なお尋ねものにして、追いつめることも忘れていない。周到なものである。

半俗半聖のモンクは、道化役をやっているが、実のところ法王庁のスパイである。彼の無害そうな外見や仕草に騙されてはいけない。彼がフランケンシュタインの怪物について、さっさと法王庁に情報を送っていることから考えても、彼は常に本部との間には密な連絡が執り行われていたと考えてよい。

実のところ法王庁にとって、危険な滅亡の賭けにでているドラキュラはもちろん駆除すべき相手だが、迷信深いムラの吸血鬼を根絶やしにしようとする一族も邪魔な存在である。
吸血鬼とのの危うい共生関係を壊すものすべてが法王庁にとっては不都合なのである。ここで一挙に両者をぶつけて潰しあわせることこそ、今回の意図だったのだ。
もしかしたらヴァン・ヘルシングが殺したように見せかけて、実のところアナをどさくさに紛れて殺したのは…あのモンクだったのかもしれない。

そして、その企みは完全に成功した。

さて、法王庁が次にやることは…?
それらの謎に気付きつつあるヴァン・ヘルシングを葬ることだろう。
そう、今度の敵は、法王庁(ヴァチカン)だ

(いや、ヴァチカン敵に回す映画をキリスト教圏では作れないとは思うけどさー。)